肛門手術をクリニックで行うということ

 5月になりました。

 連休明けから受診される患者さんが増えてきているような感じです。少し認知されてきたのでしょうか。

 開業5か月になりましたが、当クリニックでの手術数は今年の1月からの4か月で38件です。1か月9件ペースで年100件のペースになります。紀南病院での肛門手術の1.5倍のペースですので、開業半年も満たないクリニックとしては、充分合格点と思います。

 手術の後は、何のトラブルもなくこちらのイメージ通りによくなる方々がほとんどですが、やはり手術ですので、もちろん予想していなかったトラブルもあります。

 

 先日、1月に脱出性痔核にALTA注射をした患者さんが4か月の術後フォローを終え、卒業されました。同日、このホームページのお問合せメールからお礼のメールをいただきました。

 長年、がん治療の手術ばかりやっていた私が、肛門手術の魅力にひかれたのは、肛門手術が単なる破壊行為ではなく、長年の悩んできたことから解放された、患者さんの満面の笑顔に会えることです。

 排便の度に脱出した痔核を指で戻して一日のスタートを憂鬱に過ごしていた方が、毎朝日本晴れの気分で1日を始められるのは、大きな意味があると思います。慢性裂肛で毎朝トイレに行く度に激痛に見舞われ、そのあと一日中座ることできない人が、何の心配もなくトイレに行けるようになる。トイレが怖くなくなる。肛門が狭くなって、下剤で水便にしたり、ウォシュレットの水を直腸内に入れてからなんとか排便していた方が、ごく自然に排便ができるようになる。みなさん、手術でよくなると、本当に喜んでくださいます。

 大腸癌の手術をしていたときには感じなかった、術者としての感動を患者さんからいただけるのは、肛門手術だけではないかと思います。

 

 その一方で、肛門手術ももちろん手術ですから、こちらのイメージを外れて、暴走する場合もあります。そんな患者さんの肛門の状態を見ると、心がギュッと締め付けられますが、何とかこらえていい方向へ持っていく努力を惜しみません。”逃げない外科医になる”ことが20年以上前に外科医を志した時に決めたことですので。患者さんの期待に応えられないこともあります。術後ご苦労をおかけすることあります。でも、一緒に何とか笑顔に変えられる治療を考えていくのも、肛門外科医に課せられた仕事です。

 

 まだまだ私の実力は最高ランクには程遠いレベルです。日々の努力と、常に患者さんの病態を見つめて手術を行うことが達人への道と考えています。いつもいつも患者さんを手術することで、私が勉強させてもらっています。

 

 肛門手術をクリニックで行う意味を最近よく考えますが、ゆっくりでも進んでいこうと思います。