いぼ痔以外の肛門の病気のページ

血栓性外痔核とは‥

 昨日まで何もなかったのに、急に肛門の一部がプクッと膨れて、強い痛みを伴います。外痔核の内部を流れていた血液が、下痢や冷えなどによって、急に固まって血栓を作る、血栓性外痔核です。血栓ができると強い炎症が起こり、強い痛みになります。

 

 通常7日以内に血栓はゆっくりと溶けていきますので、炎症をとる軟膏治療とぬるめのお風呂でゆっくり温めることで症状は取れていきます。

裂肛(切れ痔)とは‥

 

 硬い便や下痢を契機として、肛門管の粘膜が裂ける状態です。比較的若い女性の多く、排便時出血となにより排便時の強い痛みが症状です。硬い便で繰り返し肛門管粘膜が裂けると、裂け目が徐々に深くなり、症状も排便のときよりも排便の後のほうが強くなり、1日中痛みが続く場合もあります。

 

 強い痛みが排便のたびに続くと、トイレに行くことが恐怖になり、排便を我慢するようになります。そうなると便はさらに硬くなり、さらに痛みが強くなることになってしまいます。やがて、食事を制限するようになってしまいます。

 

 この段階の急性裂肛では、薬を使った排便コントロールと軟膏治療などで、時間はかかりますが、治癒させることができます。手術になることはありません

 

 適切な治療をせずに放置すると、肛門管の裂け目は深い潰瘍になり、肛門自体が狭くなってしまいます(慢性裂肛)。硬い潰瘍になる慢性裂肛になってしまうと、元の柔らかい組織には戻らず、手術が必要になります。

肛門周囲膿瘍とは‥

 肛門から少し離れたところが膨れてきて、痛みがでてきます。皮膚が赤く腫れて、熱を持つこともあります。我慢していると数日で痛みがどんどん強くなって、足を曲げたり、真上を向いて横になれなくなります。膿のかたまりが肛門の周囲にできる、肛門周囲膿瘍です。

 局所麻酔で小さな切開をして、膿を外に出す処置(=肛門周囲膿瘍切開術)が必要です。処置をすると数日で膿は出なくなり、痛みもなくなります。

 症状はよくなりますが、肛門内から侵入した最近によってできた膿瘍が、肛門皮膚から外へ出たことになるので、肛門内から皮膚に向かうトンネルが開通したわけです。このトンネルのことを痔瘻と呼びます。

 肛門周囲膿瘍がよくなったということは、痔瘻が完成させたということもできます。

 

 

局所麻酔をして、

切開処置をすると…

多量の膿が出て来てます。

 


痔瘻(あな痔)とは‥

 肛門周囲膿瘍は切開して膿を出すことでよくなりますが、実は、ろうの始まりです。痔ろうの”ろう”はトンネルの意味で、膿の通るトンネルが出来上がっている状態です。

 

 できあがってしまった痔ろうは、自然に治癒することはなく、定期的に膿がたまって肛門部が痛くなり、排膿すると症状は消えることを繰り返します。

 

 痔ろうを薬で治ことはできません。治療方法は手術です。

 痔ろうにはさまざまなタイプがあり、複雑化すると何本ものトンネルが肛門の周りにできてしまいます。一人ひとり痔ろうのトンネルの走行は違い、きちんとした手術を行わないと再発しやすい、厄介な病気です。

 

 また、クローン病という病気の初発症状であることがあります。10代後半から20代前半の痔ろうの場合、大腸カメラでクローン病のないことを確認する必要がある場合があります。

肛門ポリープとは‥

 大腸のポリープは良性の腫瘍であり、大きくなると大腸癌になる可能性がありますが、肛門ポリープは炎症による変化で、腫瘍ではなく、将来がんへと変化することもありません。

 排便のときに肛門外へ脱出して、排便のあとに肛門内へ戻す必要があります。痔核とよく間違われます。

 局所麻酔でポリープの根っこを糸でしばって切除するか、根っこが広い場合は痔核切除に準じて手術を行います。

肛門皮垂とは‥

 肛門周囲に皮膚がたるんで膨れているものを皮垂といいます。排便しても大きくなったりせず、いつも同じ大きさです。これを痔核(イボ痔)と誤解されている方がたくさんいます。皮膚の膨らみですから、いくら肛門内に押し込んでも自然と肛門外に戻ってきます。

 皮垂は肛門機能に悪い影響を及ぼすことはありませんので、そのままにしても差し支えありません。

 

 ただし、皮垂の小さな膨らみが気になって仕方がない場合は、切除の対象になります。手術は局所麻酔で行います。

 

手術の実際:

腰椎麻酔を要する手術は近隣の病院または大阪中央病院に紹介して手術を依頼します。

慢性裂肛による肛門狭窄手術:皮膚弁移動術(SSG法)

 慢性裂肛で排便コントロールや軟膏治療で痛みや出血が改善しない場合は、肛門管の深い潰瘍が治癒しない状態です。

 また、このような慢性裂肛の場合、深い潰瘍のひきつれで肛門が狭くなっていることが多いので、裂肛切除術と合わせて、肛門皮膚をスライドさせて潰瘍部分を覆ってしまう、肛門拡張術(SSG法:skin sliding graft)を行います。

 


 硬くなった筋層をメスで少しずつ切開して通常の広さに拡張します(左図)。皮膚と肛門間粘膜をしっかりと縫合して(中央図)、縫合部分には強い緊張がかかっているので、2㎝ほど離れた皮膚に薄い切込みを入れると、皮膚が肛門内に引き込まれていきます(右図)。縫合部に緊張がなくなるまで皮膚側に薄く切開を入れていきます。肛門が拡張され、粘膜の不足分を皮膚で補ったことになります。

痔瘻根治手術:lay open法・Seton法

 最も根治性が高い痔ろうの手術方法は、痔ろうのトンネル部分をすべて開放して切除してしまう、切開開放術(lay open法)です。後方の痔ろうに対して行います。

 前方や側方の痔ろうに切開解放術を行うと、特に、ご高齢の方では、肛門機能が低下し、手術後の便漏れが生じてしまうことが知られています。肛門機能を温存する方法として、痔ろう部分にゴムひもを通して治癒させる、シートン(Seton)法が広く行われています。肛門機能の低下を最小限に抑えることができるからです。

 

 手術は腰椎麻酔で行います。近隣の病院または大阪中央病院に手術を依頼しています。大阪中央病院の斎藤先生は私の肛門手術の師匠です。退院後の管理は当院で行うようにしています。

 lay open法もSeton法も、まず膿の出口になっている2次孔周囲に円形の皮膚切開を置いて瘻管(痔瘻のトンネル)を周囲の組織から剥離していきます。肛門の近くまで来たら、痔瘻の原因となっている1次孔を確実に同定します。

 lay open法では、1次孔に向けて瘻管周囲を完全に開放して、痔瘻全体を切除します。粘膜を筋層に縫い付けて、キズが上がってくるのを待ちます。通常は4-6週間で治癒します。

 Seton法では、肛門近くまで剥離した瘻管を切除し、そこから1次孔に向けて鉗子を通過させて、太めのゴムを通過させます。ラテックスは異物反応が強いので、身体が少しずつ押し出しながら新しい肉芽が上がってきます。肛門を締めている筋肉が離断されずに痔瘻の組織が新しく上がってきた組織に置き換わります。肛門には優しい手術ですが、治癒に4-6か月かかります。

 実際に肛門の状態を見て、触って、肛門鏡で観察しないと正確な診断はできません。上記の肛門の状態に近いなと思われたら、当院を受診ください。

 

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